掌蹠膿疱症とは
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏の皮膚に多数のうみを持った小さな水ぶくれ(膿疱といいます)が繰り返しできる皮膚炎です。膿疱が消えても、しばらく経つと再びあらわれるという慢性の経過をたどります。
膿疱のなかは無菌なので、うみや皮膚に直接触れても、他の人に感染することはありません。
また、手のひらや足の裏以外に膿疱ができたり、爪の形が変わったり、胸部やあばら骨(肋骨)、関節に痛みが出ることもあります。
掌蹠膿疱症がどのようにして起こるかについては良く分かっていませんが、扁桃炎・歯周炎・副鼻腔炎といった慢性の炎症や喫煙習慣が関係しているといわれています1)。
治療には長い期間かかる場合がある一方でお薬が要らなくなる場合もありますので、主治医の先生に相談しながら治療に取り組みましょう。
掌蹠膿疱症の疫学2)
掌蹠膿疱症の患者さんの数は、日本では約13.6 万人と推測されています。女性の割合が高く(男:女=1:2)、年齢が30~50代に多く見られます。
また、喫煙者が多いことも特徴となっています。
掌蹠膿疱症の症状
手のひら、足の裏の症状
最初は、手のひらや足の裏に小さな水疱ができ、やがて水疱に濁りが出てうみの溜まった膿疱が多数できます。これらは、消えてもまたあらわれることを繰り返します。慢性化すると、炎症を起こして赤い斑点があらわれる(紅斑)、膿疱の乾いた痕がカサカサになる(鱗屑)などの症状も出てきます。かゆみや痛みを伴う場合もあります。
爪の症状
手足の爪が変形したり変色したりすることも稀にあります。
手のひら、足の裏以外の症状
掌蹠膿疱症の皮膚症状と骨関節の症状の発症タイミングはさまざまで、同時に出る場合もあれば、どちらかが先に出る場合もあります。
また、かぜや扁桃炎などをきっかけとして、皮疹や骨関節の症状があらわれたりひどくなることもあります1)。
掌蹠膿疱症の診断
掌蹠膿疱症は、さまざまな方法を用いて診断を行います。
問診、視診
患者さんの症状や、既往歴を調べるために問診を行います。 皮膚の状態を調べるために視診を行います。その際に、拡大鏡など用いて水疱や膿疱を詳しく観察することもあります。
掌蹠膿疱症診断のための主な検査
真菌検査 | 鱗屑や膿疱の中に真菌が存在するか調べます。 |
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皮膚生検 | 皮膚組織を採取して、病理組織像から、ほかの皮膚の病気との区別を判定します。 |
オルソパントモグラフィー | 歯周病や歯の根っこに膿がないか確認します。 |
血液検査 | 感染症や、ほかの病気の有無を調べます。 |
画像検査(X線、MRI) | 骨関節の症状がある場合に、骨や関節の状態を調べます。 |
必要に応じて、金属アレルギーの検査のためにパッチテストを行うことがあります。
検査の結果、掌蹠膿疱症であることがわかったら、治療を開始します。
掌蹠膿疱症の治療
掌蹠膿疱症は、さまざまな方法を用いて診断を行います。
悪化因子を取り除く
- 鼻・口・のどの部分にある無症状か軽微な、またはときどき繰り返して症状が出るような感染性の病巣が、掌蹠膿疱症の発症や悪化に関わっているといわれており、そうした病巣感染を取り除くと手のひらや足の裏の症状が良くなることがあります1)。
- 自覚症状がない場合も、まず歯科や耳鼻咽喉科で病巣感染があるかを調べ、病巣感染がある場合は治療を行います。歯科や耳鼻咽喉科での検査は、掌蹠膿疱症の症状をやわらげる上で非常に重要です。
- 歯や歯周の病巣は自覚のないことも多いので、歯科に通院いただきながら、病巣の検索や、虫歯や歯周病の治療にあたります。
- 副鼻腔炎、のどや耳の炎症については、耳鼻咽喉科で病巣の検索・治療にあたります。
- 病巣の治療後に一時的に皮膚症状が悪化することもあります。不安を抱え込まず主治医に相談しましょう。
症状をやわらげる
- 外用療法(塗り薬)
- 紫外線療法
- 内服療法(飲み薬)
- 生物学的製剤(注射薬)
などで治療します。
患者さんの症状やご自身が目指したい治療ゴール、ライフスタイルなども考慮して治療方針が決められます。治療の進め方や使用するお薬などについて希望がある場合は主治医とよく相談しましょう。
1) Kubota K, et al. BMJ Open. 2015 Jan 14;5(1): e006450.
2) 日本皮膚科学会編. 掌蹠膿疱症診療の手引き2022. 日皮会誌. 2022; 132(9): 2055-2113.